海水・淡水を飲み水にする方法・浄水方法【サバイバル知識】

このページでは、海水や川の水を安全に飲めるようにする方法を考察し、実際に現場で使えるもののなかで実現するにはどうすればよいか、のアイデアをまとめています。生身の状態で自然界に放り出された場合は、人間は水と食料の確保だけで1日、2日費やします。




海水を飲み水にする方法

海水を飲める水にするのに必要なのは

  • 海水の蒸留
  • 逆浸透膜による濾過

です。大型豪華クルーズ船などでは、その機関室、エンジンが発する熱を利用して蒸留を効率的に行えるため、あとは逆浸透膜の交換さえ追いつけば、海水を継続的に飲み水できます。

こういった非常用浄水器があれば、個人でも非常時に真水を得ることはできますが、発災時にはそもそも断水していたり、無人島や山奥に行く時にこの浄水器を持っていけてないこともあり、大型のものは活用シーンが限られます。

他にも持ち運び可能な浄水ボトルを持参するという手段がありますが、主に水道水を浄水する目的のもので、日本国内では水道水そのものがそれほど汚くはなく、水道水を飲んでも、たいていはお腹を壊しません。タイやベトナムなんかでは水道水飲むとアウトかもしれないので、こういうボトルはありがたいと思いますが、淡水、海水などではほとんど役に立たないでしょう。

 

逆浸透膜濾過装置なら可能

この商品のように、逆浸透膜を持つ装置を使用すれば海水を一応飲める状態にできます。そこそこきれいな上流の淡水もなんとかなるでしょう。

実際には、こういうアウトドア向けの手動ポンプがないと使えないです。逆浸透膜だけあってもダメで、圧力をかけて水を吸い上げるか、水を押し出す必要があります。濾過する水の汚さにもよりますが、逆浸透膜は消耗品なので、濾過すれば濾過するほど使えなくなっていき、いずれは目詰まりを起こすなどして分解清掃しないといけないか、フィルターそのものを交換する必要が出てきます。

 

簡易蒸留ではあまり意味がない

実際に試すと分かりますが、海上で遭難、無人島などにたどり着いて、そこにあるものだけで火起こしをして、簡易的に蒸留装置を作って、塩分濃度の低い水を作ろうとしてもうまくいきません。まず火起こしができません。火起こしができても、鍋やガラスがない事が多いので蒸留は難しい(道具がないと現実的ではない)です。

 

運良く、鍋があり、火起こしもできた場合は、鍋の上に、自身の洋服などをかぶせて蒸気を染み込ませ、それを絞って飲むのが無難な方法かと思います。この方法でも、洋服そのものがいちど海水にどっぷりつかっていると、結局海水の成分を飲むことになるので、どうしたものかという感じはしますが、多少はマシです。当然、服が燃えたら終わりです。

 

個人で無人島に遭難した場合

生身の人間の力では海水を真水に変えることはできませんが、無人島に何があるかによって、目的である「水分補給」はできる可能性があります。ここで言う無人島は、

  • 山と川がない
  • ココヤシ等植物は自生している
  • 他の先住者がいない

と設定しましょう。この場合、水資源は海水のみになりますが、植物が自生しているのであれば、ココナッツの実やココヤシの樹液を飲める可能性があります。これらの植物は海水、海水に近い水を吸い上げても生きていける植物ですので、これに頼るのが一つの方法です。

 

ちなみに、ナツメヤシの樹液も一応飲めなくはないようですが、ナツメヤシの生息域は乾燥地帯で、砂漠で遭難した時には多少なりとも水分確保ができる可能性があります。

 

これ以外の植物の樹液を飲むのは避けたほうがよく、必ずしも飲めるとは限りません。味も期待してはいけませんし、ココナッツの実であっても古くなっているものはおそらく飲めないくらいに腐敗が進んでいます。また、ナツメヤシやココヤシの樹液は時間経過で発酵し、数日で酒になります。

 




無人島で植物がいない場合

小さな無人島で岩肌が多く、まともに植物も生えていない場合には、他の水分摂取方法を考えなければいけません。

  • 物資なし
  • 植物なし
  • 海あり

この状況では、火起こしもできず、狩猟も難しく、当然水の確保も難しいです。もし、雨が降ってくれれば、その雨水を自身の洋服に染み込ませて、絞って飲むという方法がありますが、海を泳いで命からがらたどり着いている場合は、洋服が一度海水を吸っているので、雨水で多少洗い流してから…ということになります。当然、雨水がきれい、ということでもありません。

 

もし、魚を採れる状況になっている場合は、魚の血液ではなく、魚の身を食べるだけにしたほうがマシです。当然、アニサキスや食中毒のリスクはありますが、魚の肉には多少なり水分が含まれているので、ほんの少しでも命をつなぐことはできるかもしれません。当然、食べられる魚と、食べられない魚に関する知識が必要な上に、海で魚をとるのは非常に難しいです。

 

山の淡水を飲み水にする方法

海よりは、山のほうが木や葉が多いですが、だからといって海よりマシかというとそんな事はありません。

  • 大量の生物・獣
  • 寄生虫や病原菌
  • 見えない洞窟・崖落下
  • 上流の水を求めるとさらに山奥に遭難する

また、山に行くと分かると思いますが、そんなにどこでも水が流れているわけではありません。ほとんどは落ち葉、土、木、急斜面で構成されていて、多少水があってもだいぶ淀んでいる上に、寄生虫や病原菌の宝庫なので飲めません。

 

川には、1級河川、2級河川、3級河川というものがあり、山の中でちょろっと見かけるような淀んだ水は、携帯用浄水器程度では飲めない水です。1級河川という比較的きれいな水で溢れている川の水であれば、携帯用浄水器で飲めるようになりますが、そんな分かりやすい場所で遭難するか…というとなんとも言えない感じはあります。

 

北海道大雪山にあるような天然の湧き水、水汲み場なんてのがあって、そこからそのまま飲める…なんていうケースのほうがレアです。滝壺がどこにでもあるわけでもなく、洞窟の中の水もミネラル分が多すぎて、かつ、寄生虫・病原体のリスクはあり、煮沸だけで飲めるか…という心配が消えません。

 

もし、持参できるのであれば、煮沸できる装備一式、携帯式浄水器の両方があれば、ひとまず水の確保は可能です。

煮沸した上で、ろ過器を使用できれば、だいぶ安心です。1日分、2日分をまとめて精製しておけば移動効率は落ちないでしょうし、遭難時の体力低下も最小限にできるはずです。ただし、きれいな淡水を見つけられれば、の話です。

 




空気中から水を集められないか

海水も淡水もリスクがありすぎる上に、そう簡単に飲める状態にできないのは理解したと思います。ここで、もう一つ、空気中に含まれている水分・水蒸気を収集できないか、まとめておきます。

 

コップの結露を利用する

火、鍋とコップの2つが必要です。沸騰した鍋の上、少し離れた所に、中身が冷たい水などで満たされた「外側がきれいなコップ」を用意して、上記画像のように配置。これで、蒸発する水、コップと外気の温度差、水蒸気量の関係で、コップの外側に結露した水滴が付きます。

 

この水滴は、基本的に真水です。

 

この結露で得られる水をきれいな布で拭き取って絞るか、水滴ができる都度、きれいなボトルになんとか入れておけば、真水の確保はできます。

 

この方法は、温度差と水蒸気量が大切です。

 

ここでも同じく、火起こしができることと、鍋やコップがあること前提です。生身のすっぽんぽんの、何も持っていない人間にできることではありません。

 

雪・氷も溶かしてから濾過が必要

雪山や天然の氷も不純物が混ざっている事が多いので、液体の水にしてから、せめて携帯用浄水器などで濾過をしましょう。不純物は煮沸しても取れないので、濾過が必要です。濾過しなくても飲める(雪の場合は食べる?)可能性は高いですが、体温を冷やさないように、常温に戻して溶けた状態のものを摂取したほうが良いです。

 




事前調査と準備がすべて

山でも、海でも、行く前には

  • 十分な物資の用意
  • 土地の調査
  • 方角の確認

などが大切です。気休めにでも携帯用浄水器を持っていれば、なんとかなるかもしれません。理想は、ペットボトルの水を持っていくくらいで、究極言えば、一番は安全な部屋から出ないということです。

 

飲める水が気軽に手に入る環境は非常にありがたいものなんです。これを学べれば十分です。命の危険がある場所には無理に行かないのが答えです。

 

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サバイバル

Posted by 防災士