避難所運営と支援のヒント

2022年時点では、各避難所ごとに避難所運営マニュアルや運用方針などを作成するよう都道府県、内閣府が呼びかけています。災害発生後に避難所運営マニュアルを作成しても手遅れなので、事前に作成して地域住民に共有しておく必要がありますが、されていない自治体が多いです。早急に避難所運営マニュアル等を作成して下さい。




避難所運営マニュアル作成の基本

避難所の運営に必要なリソースは「場所・人・モノ」です。

避難所開設手順等

災害発生時、または、避難指示が出た時には避難所を開設させないと、逃げてくる人がいても避難が完了しません。

  • 避難所解錠・開門
  • レイアウト設定・受け入れ
  • 住民への周知・災害対策本部への報告

おおまかな流れはこのようなシンプルな流れです。発災後、避難所が用意されてから避難者がやってくる、という構図が通常です。災害の規模、避難所運営者の被災状況によっては避難所を運用できない場合もあり、日頃から地域での連携、プランB、プランCの人員用意と訓練が重要です。

 

レイアウトはさほど難しくないですが、教室や他の屋内に避難場所を確保する場合には、通路の安全確保とルートを分かりやすくする貼り紙などでの工夫が求められます。

 

班分け・役割分担

避難所では、運用者を含めて全員が被災者となりますので、運用負担が1人に大きくならないよう、役割分担をする必要があります。

  • 総務班
  • 施設管理班
  • 居住区域管理班
  • 情報広報班
  • 避難者把握班
  • 食糧物資班
  • 救護班
  • 衛生班

最低でもこの8グループ必要です。学園祭実行委員、体育祭実行委員、生徒会、自治会の運用経験がある人ならば、どの立場でもおおよそ立ち回れるでしょう。




総務班

総務では、地域の災害対策本部、各班、メディア取材などへの連携対応が求められており、おそらく最も広い視野を持って、多方面柔軟に対応する必要が出てくる班です。災害対策本部との連絡・情報共有も大切ですが、各班との連携、在宅のままの被災者の把握などもしなければいけません。

 

施設管理班

主に避難所の居住区域以外の全ての施設を管理することになります。避難所への出入り口、通路、トイレやシャワー室、救護室、総務室、要支援者専用室などの状況を把握しつつ、電源、水、気温・室温、安全性などを維持する警備も担うものと考えましょう。避難所では大勢が集まる故に、把握できていない場所でレイプ・強姦が起こることもあります。こうした事象を起こさないためにも警備も含めての施設管理が必要です。

 

居住区域管理班

主に避難者がまとまっている居住スペースの管理をする班です。エリアの確保と、レイアウトの調整・分配、不足する居住エリアの追加、トイレやシャワー利用の衛生管理や順番管理、避難者のトリアージ・健康状態把握の他、DV・要支援者の発見・保護など、避難者の避難時間中の平穏と健康を守るのが任務です。

 

情報広報班

避難所での放送、SNSやローカル地域への人力連絡、災害対策本部との連絡・人力連絡、被災地域の情報収集と避難者への共有などが主な任務となります。各班への報告連絡の効率化、及び、避難者への状況説明・共有などが任務です。電子機器の取り扱いに長けている必要があり、場合によっては避難所での充電分配を担う必要があります。避難者の多くはスマホなどの充電を必要としている他、中にはスマホの使い方がよく分かっていない場合もありますので、それらへの対応も必要です。

 

避難者把握班

避難所内と避難所外の人を把握するのが主な仕事です。避難所に避難してきた人の中には、避難所で命を落とす人もいます。その場合、遺体安置所を用意しておく必要があるため、避難者把握班は、要救護者・死者ともに把握して、適切に人の移動を把握する必要があります。居住区域管理班と協力関係にありますが、避難者把握班は、避難所運営をしている人にも気を配って、眠れていない、休めていない運営者がいたら、その状況を把握し、サポートに入って下さい。

 

食糧物資班

避難所に備蓄されている食糧・物資の適切な分配と、後から補給される物資、自衛隊の補給支援などが円滑に行われるようコントロールするのが仕事です。だいたいの日本人は列を作って待てる場合が多いですが、中には怒鳴り散らしたり、長く待てない高齢者・子どももいます。面倒を避けるために、高齢者・子どもを優先して物資を配布しつつ、全員にバランスよく、適切に物資が回るよう、柔軟にうまい具合に対処するのが仕事です。残存物資の把握も重要です。

 

救護班

投薬や治療、生命維持、看護を必要とするような現場だと考えて、医師や看護師、救命士、医療経験者が配属されるのが理想です。被災者の明らかな怪我・病気に対処しつつ、新型コロナウイルス感染症対策となるアルコール消毒やマスクの配布も担うことになります。物資班では仕事が増えすぎるので、救護班が物資班と協力して、医療リソースの提供に当たるのが理想です。

 

衛生班

トイレ、シャワー、洗濯、炊事場、居住区域の騒音・においなどに対処する班です。大勢の人がいる場所では、いびきや音漏れなどが気になってまともに生活できない場合もあります。トイレ掃除、シャワールームでの強姦・レイプ防止、転倒事故防止の他、洗濯と避難者の衣服の状態把握、炊事場の食品衛生などの維持・メンテナンスなどが仕事です。

 

人員割当と解任

初動での避難所運営要員では、現場の細かな変化に対応しきれません。避難してきた人にも協力してもらう必要があるため、適切に運用を依頼し、適切なタイミングで休息・交代できるよう配慮し、向き・不向きが明確な場合は異動、避難所から退所する場合には解任・交代をスムーズに行う必要があります。

 

各地域での避難所運営のマニュアル・ガイドライン作成が最も重要ですが、難しいことではありません。学校で経験したはずの学園祭の運用と同じ感覚で、現場で手探りしながら運用できれば十分です。

 

避難所の役目は、発災後の安全維持・生命維持の補助です。避難所では全員が被災者で、公的サービスでもなく、お客として扱う必要も、お客として扱われることもないものです。




一部の人は避難所要員になりたがらないのに現場で文句は言う

それぞれの自治体で問題になるのが、人材不足です。避難所運営をやりたがらない人が多すぎて、訓練にも参加しない、ただ助けてもらうことしか考えていない「動ける人」というのが一定数います。避難所運営は日頃からの連携や、人間関係が重要になりますが、それがない人がいきなり流れ込んでくるとなると、面倒なことがさらに増えます。

 

そういう人に限って、避難所では物資を多めによこせとか、対応が遅いとか、ふんぞり返って文句言ってきたりすることがあるので、避難所にはそういう「変な人」は「変な人」だけでまとめて放り込んでおける居住区域を用意しつつ、大声ではっきりとそういう「変な人」を叱りつけられる強い人を用意する必要もあります。

 

こういう「変な人」は物資を盗んだり、強姦をしたり、周囲の迷惑になることをしたり、現場のルールを無視したりします。そういう「変な人」を一般の人と混ぜないようにして下さい。十中八九問題を起こします。

 

避難所運営をする人たちは、日頃から、日常生活でも連携しつつ、平穏な関係を築ける者同士であった方がよく、常に新人を募集しましょう。その地域に長く住んでいる若者、技術者、医師、看護師などに日頃から声掛けをしておいて、いざという時には協力してもらえるように動きましょう。

 

平常時の準備が、発災時に多くの人を救います。

 

出典・参考

内閣府|避難所運営ガイドライン

http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/1604hinanjo_guideline.pdf

山梨県|避難所運営マニュアル

https://www.pref.yamanashi.jp/bousai/hinanjomanyuaru.html

基本モデル

https://www.pref.yamanashi.jp/bousai/documents/manyuaruhonnpen.pdf

様式・関連情報

https://www.pref.yamanashi.jp/bousai/documents/manyuaruyousiki.pdf

新型コロナウイルス感染症に対応した避難所運営マニュアル作成指針

https://www.pref.yamanashi.jp/bousai/koronamanyuaru.html

 

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Posted by 防災士