ペニシリンの作り方【サバイバル知識】

ペニシリンは1928年頃に発見された抗生物質の一つで、これまで多くの人を病から救ってきました。真正細菌細胞壁のペプチドグリカン(ペプチド&糖)を合成する酵素の働きを阻害するなどして細菌感染症などの悪化を防ぐのを助けてくれるものです。ここでは、化学と微生物学の知識を合わせて、簡単にその作り方を紹介します。




ペニシリンの構造と作り方|合成方法

ペニシリン(Penicillin)は、化学式C9H11N2O4S、種類としては

  • 天然ペニシリン
  • 生合成ペニシリン
  • 合成ペニシリン

などがあります。天然ペニシリンは「Penicillium noctum」という菌株を培養させてペニシリンG(ベンジルペニシリン)を抽出したもので、これがきっかけになって、様々な合成方法が見出されました。

 

ペニシリンGは、上記のような化学式C16H18N2O4S、のものです。適量の摂取であれば薬になりますが、多用すると神経毒性、溶血性貧血、発熱、ショックなどひどい副作用もあるので、なんでもかんでも安全であるわけではありません。また、ペニシリンGは胃酸に弱いので経口摂取してもあまり効果は期待できない。

 

ペニシリンGの化学的合成方法|事例1

ペニシリンGを合成するには以下の工程がひとつ、方法として考えられます。

  • α-アミノアジピン酸+L-システイン
  • これにL-バリンを加えて
  • 「δ(デルタ)-α(アルファ)-aminoadipylcysteinylvaline」を得る
  • ここから「2H」水素を奪い取り
  • Isopenicillin Nと反応副産物を得る
  • Isopenicillin N二アセチルトランスフェラーゼを加えて
  • Penicillin Gを得る

最初の「α-アミノアジピン酸(AAA)」は高等生物の必須アミノ酸である「リジン」の生合成経路にある物質の一つで、常温25℃では固体、Merch|Sigma-Aldrichで買おうと思えば買えます。

出典1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/9/1/9_1_10/_pdf/-char/ja

出典2:https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/22/4/22_4_284/_pdf/-char/ja

 

この時点で、合成の操作過程がなんとなくイメージできない方は、あきらめて、抗生物質を処方してもらう方向で考えて下さい。実際には、試薬を水に溶かすのか、他のものに溶かすのか、ちょいちょい乾燥粉末にして取り出してなんたらかんたらするのか、など、細かな操作が必要になるため、上記出典だけ見ても合成はできないです。

 

例えば「特定部位から水素を奪う」には何をすればいいか、というような有機化学の実験の知識が必要になります。

 




食べ物の青カビからペニシリンは抽出できる?

家庭にある青カビからもペニシリンと呼ばれる種類の化学物質は抽出できます。

  • 柑橘系・みかんの皮(またはポテトでんぷん系培地)を用意
  • 青カビ(ペニシリウム・クリソゲヌム|Penicillium chrysogenum)を生えさせる
  • 液体培地を作り、青カビを入れて培養
  • 培養液を濾過
  • 濾過した液体に油を混ぜて不純物を取り除く
  • 水溶性部分だけ取り除いて炭などで不純物を減らす
  • 炭についているはずのペニシリンを酸性水溶液で洗う
  • 炭についているはずのペニシリンを塩基性水溶液で洗う
  • 塩基性水溶液で洗った液体中にペニシリンがあるはず

室蘭工業大学|学術資源アーカイブ「ペニシリウム・クリソゲヌム」で検索後「育てたくなるカビ」のPDFより詳細のポテト培地作り方の情報があります。

出典3:https://school.gifu-net.ed.jp/ena-hs/ssh/H30ssh/sc2/21835.pdf

 

この方法で、一応、高校生で使える、家庭で用意できる試薬(酢酸水溶液や重曹水溶液)で青カビからペニシリンと思われる成分の抽出っぽい操作ができます。

 

問題は、コンタミ予防の知識・実務と、抽出できる量でしょう。それでなくても少ないので、途中の操作でロストすればペニシリンが生成できているか確かめる操作の時点で、ペニシリン溶液がなくなります。

 




もっと良い方法はないの?

青カビ、ペニシリウム属が欲しいのであれば

  • ゴルゴンゾーラ・ブルーチーズ(Penicillium glaucum)
  • カマンベールチーズ表面(Penicillium camemberti/Penicillium candidum)

を、そのまま食べるという荒業があります。ペニシリン的な物質を生成しているカビごと食ってしまえばいいんでねぇの?という方法です。その食べられる青カビがチーズを守れているのは、ペニシリンのような物質ができていて、他の菌類からそれを守っているからです。

 

当然そこにはペニシリンと名のつく何かしらの成分があるわけで、医師に処方してもらうちゃんとした投薬の抗生物質に比べると、すぐに胃酸でダメになりそうですが、喉とか、口の中では何か役に立ってくれそうな気がしませんか?

 

※はちみつ同様、乳幼児には食べさせてはいけません。

 

おそらく、ペニシリンを自分で合成、抽出できそうにないな…と思ったら、ブルーチーズを適量食べるほうがいいかもしれません。お腹も膨れますし。

 

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サバイバル

Posted by 防災士